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2015年10月 1日 (木)

『セリフの効用』

私のマジックをご覧になったことがある方は、結構おしゃべり部分が多いな、と感じたのではんないでしょうか?

それは、私自身が、マジシャンが話す奇妙なストーリーを聞くことが好きで、実際「そんなわけないよ」と思いながらも、惹きつけられるからです。 ただし、いい大人なので「このトランプは実はワニです。」などという突飛かつ、現象に結びつけるためにこじつけが強い話には、全く興味が湧きません。 やはり、それなりの説得力があるか、或いは思わず笑ってしまう内容が伴っていなくてはならないと思います。セリフもマジックの一部であり、表現なのですから。 マジックが曲で、セリフが詩、くらいのウエイトを持っていることすらあります。

さて、Close-Up Magicの巨人と言われた、オランダのFred Kaps氏の “Original Chinese Coin Routine   Giant Chinese Coin Climax” という有名な作品があります。 コインマジックでこれ以上強烈な現象はない、と言っても過言ではないもので、私は、根尾昌志氏の優れた方法を愛用しています。

Kapsと根尾氏の現象は、微妙に違う部分もありますが、大体同じで、実際に私が演じている現象は・・・ 

4枚のアメリカの50セントコインで色々なマジックを演じます。

「種がわかりにくいのは、あまり見覚えのない、外国のコインだからです」 と言って、財布に3枚は片付け、代わりに5円玉を出してきます。5円と50セントを握って、50セントを取り出し「手に残っているのはなんでしょう?」と問います。手を開くと、確かに5円玉が残っていますが倍ほどの大きさになっています。 

「チビ助は、財布に戻っています。」と言って、財布から普通の5円を取り出します。

ハンカチを広げて、その下に5円と大きな5円を離れ離れで置いて 「位置を交換させます」 と言いますが、変化が見られません。大きな5円をどけて、ハンカチをめくると、5円があった場所に巨大な5円が現れます。

「・・あ、待ってください。チビ助はいつも財布に戻ってます。」 財布から出します。

「この中で一番大きいのはどれでしょう?」 お客さんは最後に出たコインを指さします。

「いえ、こちらです。」 ハンカチをどけると、更に何倍もある、お盆のような大きさの5円玉が出現します。

以上が、このマジックの粗筋です。 メインの現象は大きなコインがドンドン出ることですが、原案では、もう少し凝った演出がなされています。 最初の部分で、50セントと5円を左手に握り、50セントを取り出して右手で握ると5円になり、客からは「2枚が入れ替わった、と思われるが、左手を開くと大きな5円玉が出てくる、というもので始まります。 そのあとも、ハンカチの下で2枚の位置が入れ替わる、と宣言して次々に現象が進んでいくので、ストーリーに一貫性があります。勿論、本当の現象は入れ替わると言っておきながら、ドンドン大きなコインが出てきてしまうので、Kapsお得意の「マジシャン自身が翻弄される」というカラーになっているのだと思います。 しかし、『交換現象』というものは、意外と見るものの頭に負担を掛けます。 見えている状態で交換するのでなく、手に握ったり、カップの下に隠された状態で交換するので、どちらに何があるか、しっかり覚えていないと、現象がわからなくなるのです。特に、この奇術では、交換などせずに、大きさが変わるので、驚くし面白いのですが、結構混乱をきたします。

だから、私は、最初の部分を上記のように変え、話をシンプルにしています。

さて、問題は、現象のサイドストーリーとして、ちょいちょい挿入されている 「5円が財布に戻っている現象」 です。 本筋の、でっかい5円の出現と比べて、財布に小さい5円が戻る現象など、本当に地味で、必要かどうかすら疑問になります。 奇術の構成上、これによって上手く事が運んでいるのですが、現象としては、受けるものではなかったのです。 私自身も、そのように感じて演じていた、ということもあります。

ところが・・・ 毎週のように演じ、あるとき、この5円玉を 「ちび助」 と呼んでみたのです。少々古めかしい言葉の上、差別的な匂いがしますが、ちょっと可愛い響きもあります。それに、この5円が本物であり、他がデカイだけで、ちっとも小さくはないのですが、比較すると、どうしても「ちび助」に思えてしまいます。

さて、財布に戻った時に 「チビ助は財布に戻ってしまいます」 というセリフを入れることによって、お客さん(特に女性客)に、その現象自体にキャラクターを与える効果が生まれました。 特に説明せずとも、お客さんは「チビ助は恥ずかしがり屋だから」という、キャラクターを想定するようです。

そして、最大のコインがハンカチ下から現れる直前にも、「またチビ助は戻ってます」と言って財布から出してきます。 ここで、よく女性客から「なんで、お前はすぐ戻る?(笑)」というような言葉が出ます。 『ちび助』と呼んでいなければ、これほどこの現象に興味は持たれなかったと思います。  

最大のクライマックスの直前に、この軽い笑いで、観客の緊張がほぐれます。だから、これでこの奇術は終わったと信じるのです。そのあとに、トンデモないクライマックスがあると知らずに。 その効果によって、最後のジャンボコインの出現が更に強烈になっていると思います。

セリフの効用というものは、多岐にわたりますが、これも、自分のセリフの中では印象深いものとなっています。

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