5月11日に、私の加盟するInternational Brotherhood of Magicians Osaka ring・大阪奇術愛好会の発表会があり出演いたしました。 この会は、ベテラン、有名な奇術の研究家ばかりで、発表会もクオリティーが高いので有名です。なんといっても、普通『発表会』と称するショーを行う場合、出演者間の演目が重ならないよう、事前に「ネタ合わせ」という調整が行われるのが常識ですが、この会の発表会において、そのようなことが行われたことは1度もありません。 というのも、全員のオリジナリティーが高すぎて、例え、同じ現象でかぶったとしても、全然方法は違い、逆に対比が面白くなる・・・という状況。
さて、私のこの日の演目は Egg Bag with Multiple Climax http://cullblog.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/egg_bag_with_mu.html Marshmallows http://cullblog.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/marshmallows.html の2つでした。
ブログ内の記載は以前のものなので、手法も演出もかなり変わってしまっていますが、大筋では同じです。
“Marshmallows”の方は、この会が出している雑誌スベンガリに解説も書きました。ご興味ある方はマジックショップ等を通してご購入ください。
この作品は現在大阪医大の整形の教授であり、優秀な奇術研究家でパフォーマーでもある根尾昌志氏の『ヨーグルト』という傑作のアイディアをお借りしているので、丁度会場にいらっしゃったのでお礼を述べると、根尾先生、このブログをチェックされているとのことで、とても嬉しく感じました。
さて本題は、“Egg Bag”の方です。 『袋玉子』という奇術には幾つかのクライマックスがあります。私自身、実際に普段使っているのは、ウイスキーの入ったショットグラスが出てくるものです。しかし、このクライマックス、液体が出るので驚きも大きく、受けるのですが、ストーリー的にあまり意味がありません。驚かせているだけ・・・というきらいが。 クライマックスにおける私の結論は『一気に大量生産』です。 ストーリーのフィット感、驚きを考えるとこれに勝るものはないと思っています。
そして、以前からこのクライマックスに取り組み、資料も集め、演じても来ました。このブログに書いてある方法は初期のもので、これをJapan Cupのガラショーで演じたとき、ヒロ・サカイ氏の指摘で、この方法の大きな弱点に気付き、放棄したのです。 その後、全く違った方法で演じていたのです。そして、まずまず安定しているので、これを愛用していたので、今回の発表会でも使用し、ほぼ好評を得、宮中桂かん氏からもお褒めの言葉をいただいたのですが・・・演じながら、長年の違和感に気付いたのです。 『玉子の出方がスムーズじゃない!』
最初に考えた方法は9個の玉子が、小さな袋から次々に出るものでしたが、この1つづつ手で取り出す演技がだれるのです。 できれば一気にたくさん出た方が受ける。その考えで、現在の方法に到達したのですが、実際、このギミックでは、絞り出すようにしないと全部出てこない。本来、ダダーっと出てくるクライマックスを目指して作ったはずなのに、目的を果たしていないのです。 ところが、自分で作った奇術というものは変な愛着があり、謂わば「自分の娘が美人かどうか、冷静に判断できない」というような心理が働いているようで、今回の発表会で演じるまで、その部分に目をつぶっていたようなのです。
専門家が大挙して見に来るという、この異常な発表会の緊張の中、演じることで、自分の中で、誰からも言われることなく、冷静に見つめ直すことができたようです。
帰宅道中、そのことを少し考え直し、昨夜、突如アイディアがひらめき、早速、ギミックを一から作り直し、試してみると、ずっといい感じに『ダダー』と玉子が溢れ出ます。
しかし、まだ納得できず、今朝更にひらめき、早朝、作成したギミックをほどき、一部デザインを変更すると、さらに『ダダー』(笑)
こういうことは、頭だけで考えていてもなかなか先に進まない面がありますが、手を動かし続けるだけでもゴールには至りません。両方の作用が上手く働きあってアイディアが実現されます。 しかし、それだけではBreak Throughを起こすことは少なく、何かのきっかけがあって、往々にして、今まで固執していた方法を一旦全て捨てることで、それを迎えることができることが多いようです。 そういった面で、実際に一番大切なことは『完成したと思わず、しつこくこだわり続けること』に限ると思います。 『準備しているものだけに、偶然は訪れる』の諺の通りに・・・
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